ステップファミリー体験記その2
私の2度目の結婚へ
バツ×2、子供3人の私と、バツ×1、子供2人の妻との結婚物語です。
なぜかアフリカへ
20代後半、軽い気持ちで結婚に失敗した私は、しばらく独身を謳歌していました。
幸い子供がいなかったので、再び訪れた自由な日々はなんとも心地よかったのです。
そんな時、転機が訪れます。
職場の上司から「急ですまないが、アフリカに飛んでくれないか?半年だけど」
「はあ~? なして?」
1カ月後、私はイギリス経由でアフリカの上空を飛んでいました。
この間のオーストラリアとは大違い。
さらにアフリカの航空会社を乗り継ぎ、奥地へと行きました。
しかも新婚旅行で出会ったアボリジニーおじさん風の乗客だらけ。
どうも機内が臭いと思っていたら、おもしろいことに乗客にヤギがいたのです。
機体が上下するたびに「メーメー」泣くので、臭いのとメーメー声で、
生まれて初めて乗り物酔いを体験しました。
「はあ~、はあ~」
同僚とため息を180回ぐらいつきました。
アフリカ大陸の東側に位置するモザンビーク。
空港に着くと、ものすごい臭いとやってくる「金くれ金くれ」の人々でメンタルが疲弊しました。
クレクレ星人の面々はいろいろな人がいて、片足がない人、子供、おじいちゃん。
世の中にはこんな現実があるんだなー、とつくづく実感しました。
田舎道を走ると人の遺体に出会うこともあります。
コンビニがないので、トイレしたくてその辺で用を足しますが、
「これなんだろう?えーいかけてやれ」
おしっこをかけたのは地雷でした。それも相当大きな対戦車地雷!
内戦のために200万個も埋設されている地雷でした。
起爆させると3回建てのビルが簡単に吹き飛ぶそうです。
日本はなんて良い国か。あらためて思い知らされました。
だっていつでもどこでもコンビニがあって、好きなものが食べれて道に倒れている人なんかいない。
当たり前がどんなに幸せなことか。
アフリカで空手?
仕事は空港内で現地の輸送調整でした。
毎日毎日、空港内で調整作業。
生活に慣れたころ。
子供たちがやってきては、少しずつ話すようになりました。
ポルトガル語ですが、ある日7才の男の子マニーニョ君に出会いました。
彼はなんと英語が話せたのでした。
私のところにやってくる子供たちは日々増えていき100人はいたと思います。
現地ではなぜか今頃ブルースリーが流行っており、私を見つけると少年たちは戦いを挑んできます。
東洋人はみな同じ顔に見えるのでしょう。
あまりに礼儀を知らないので何度か怒鳴ったりしましたが、一向に止まりません。
そこでマニーニョに通訳させて「これから空手教室やるから夕方集まれ!」
とみんなに申し伝えました。
実は私は柔道はやってましたが、空手はやったことがありません。
そして夕方。
20人ぐらいの小さな男の子が集まってきました。
その日から私の呼び名は「マスター」と呼ばれるようになりました。
適当でしたが、礼の仕方、正拳突きや蹴りを教えると素直にやってくれました。
「えい、えい」
かわいい声がなんとも愛しい。
いつしか塾生は100人を超えていました。
もう誰が誰だかわからない状況。
街を歩いていても「マスター!」と声を掛けられるまでになったのです。
一番遠いところでは10km以上離れたところから通ってくれる子供までいました。
そうなると可愛くて可愛くてたまりません。
いつしか7才のマニーニョはボスになっていきました。
15才くらいの子がマニーニョに媚びをうっているのです。
なんだか世の中の縮図のような一面でした。
空手教室がアフリカでのライフワークのひとつになりました。
子供たちは甘いものに飢えています。
ある日広大な一本道を頭に大きなツボを載せた幼い姉妹を見つけました。
付近には全く家がなく、いったいどこへ向かうのか不思議に思いました。
見ると大きなツボにはたくさんの水が入っており、家に戻る途中でした。
かわいそうに思い、バックにあったアメを2個ずつ渡しました。
私は車に乗り込み、水平線のかなたにもやけていく彼女たちをバックミラーで見ました。
アメをなめたのでしょう。
2人で私が見えなくなるまで、ずーっと手を振っているではありませんか。
なんだか私は気持ちが通じたようでうれしくなり、涙で見えなくなりました。
幸せになってほしい。
他人に対してこれほど幸せを祈ったのは初めてでした。
こうして、アフリカ生活は半年を迎えました。
私の中に子供を育てたい、という気持ちがグツグツとわいてきました。
日本に帰ったらまた結婚しよ。
旅立つ日。
塾生たちが大勢集まってくれました。
浮かない顔で私をにらんでいました。
みんな幸せになれ、空手は簡単に使ってはいけない
などと一人前のことを話しました。
マニーニョの最後の涙の通訳でした。
車に乗り込むとみんな追いかけてきます。
「マスター!」
「マスター!」
またくるよー!
涙でみんながふやけて、やがて見えなくなりました。
続く